2021年4月4日日曜日

沈む船と産まれる男子

  センゴク権兵衛、の感想。

 205話
 明の勅使の歓待が始まる。相伴したのは小西と三成ら奉行衆であった。
 歓待は終始和やかに進む。廊下で侍る権兵衛はこれを意外に感じていた。
 
 権兵衛は出てきた小西に声を掛けるも疲れた顔で袖にされる。
 三成達奉行衆は権兵衛の無礼を不問にした。朝鮮での事を考えれば、マシに思えるのだろう。

 自陣に戻った権兵衛は家老たちと話し合う。
 朝鮮での苦戦を感じ取り、兵糧の算段を無用ノ介に頼む。そして外交交渉を聞く。
 両国朝廷、豊臣政権の正統性、等々問題も多く、その上幾人もの人を介しなければならない。その上で、最初の案で合意の可能性が見い出せるものでなくては、戦は長引く。そう無用ノ介は結論付けた。
 権兵衛はそれを聞き、寂しい話と言った。
 交渉が長引いて、秀吉の天寿が尽きて、唐入りも中止。そんな期待を皆がする流れになれば、天下人とはあまりにも孤独ではないか、と。
 権兵衛自身が期待しているのでは、と言われ否定する。しかし、考えれば考える程に迷いは深くなり、思うかもしれぬ、と思う。権兵衛はいずれ思う事になると思うとより、寂しい話と考えるのだった。
 
 秀吉の和平案。それはこれまでの経験に裏打ちされた、敢えて多めに要求し、譲歩案で決着させるものだった。
 明国皇女降嫁、高麗下半国割譲、貿易権獲得の三つを要求して、拒否されたら一番受け入れられる貿易権獲得で手打ちにする、その腹積もりだ。
 秀吉は領土と言う花を捨て実をとった。それこそが豊臣秀吉と自分に言い聞かせる。
 すべてはこの刻の為に天は自分を地に遣わした。ここまで来たのも天の導き。
 疎まれ蔑まれてきた自分が衆生に愛され崇め奉られる、そう思うのだった。

 206話
 秀吉の和平案が関白秀次の元に送られた。
 条件は先の三案に更に朝鮮王子の差出も加わっていた。が、要は同じ貿易権を獲得する為に勘合貿易を復活させる妥協案に最終的に落とし込むのだ。
 これを見た田中吉政は秀吉の意図を理解し、ゼニに名誉、それに豊臣の正統性の三つの利益がある、と言う。ただ、領土を求めていた大名には失態者から領土を召し上げ配分するしかなかった。
 秀次は秀吉は誰よりも知恵があると言う。だが、不勉強だと。
 唐国の知識の積み上げ、議論の厚さ、そして数々対外交渉。それは豊臣家の比ではなかった。秀次は秀吉の外交策に明は釣られないと考えた。
 だが、秀次は関白の権限で却下はする事は出来なかった。そのような鼎の軽重を問う真似を。
 和平案は勅許を得て、明の使節に渡された。

 使節も帰り。秀吉も上機嫌であった。完成が遅れた鉄甲船に関しても不問に、寧ろ労った。

 だが、その頃京では刃傷沙汰が起こっていた。それも秀次の小姓と御弓衆が口論の末にであった。
 茶々の懐妊で秀次の周辺は騒がしく、緊迫していたのだ。当然、秀次も心をざわつかせるのであった。

 いよいよ、鉄甲船のお披露目が名護屋であった。秀吉だけでなく、多くの者が見物する。
 が、その船は沈没してしまった。
 まるでこの先の豊臣政権を暗示するかのように。

 そして、遂に、八月三日に後の豊臣秀頼が誕生するのだ。

 207話
 和平の返事を待つ間、朝鮮から諸大名を帰還させる事になった。勿論、現地に在番する大名もいた。
 彼らの帰還は九月の初旬から中旬。秀吉は彼らを出迎えて、その後に大坂戻る予定を立てる。
 秀吉は唐入りを成功、と言い。他の者達も九月の末までに陣払いの支度をするように命ずるのだった。
 権兵衛も陣に戻り、皆に指示をする。一応勝った、との事なので家臣達は勝鬨を上げるのだった。

 夜、秀吉の屋敷にも鬨の声が聞こえた。秀吉は一緒にいる竜子に聞く。皆、何に喜んでいるのか、と。唐入りが成功裏に終わりそうな事なのか、唐入りに行かずに済んだ事なのか。
 秀吉は竜子に縋る。自分は万民が為に唐入りをしたのだと。そして実が得られたら自分の行動が正しかったとわかる、と。
 秀吉は、寧々は出家従っているし、茶々は政をまだ知らない、と言って竜子だけだと言う。それを聞き、竜子は今秀吉を絞め殺せば万民を救えるのか、それとも乱世に逆戻りするのか、考える。
 肌を重ねつつ思う。猿楽だと。この子猿の采一つで、日ノ本、明、南蛮までも振り回される、と。

 八月九日、に茶々の出産の報せが入る。
 すると、渡海勢の凱旋も待たずに早々と、大坂に帰ってしまったのだ。
 権兵衛達も同じく帰る事になった。当然、家臣達からは驚きの声が出る。
 権兵衛は色々思う事はあるだろうが、一兵も死なずに逃散しなかった事を誉める。そして、名護屋の都で学んだ事を小諸で生かし、城下を作るのが自分達の務めだと言う。
 一年余りの名護屋での在陣は終わった。

 八月二十五日に秀吉は大坂に帰着し、産まれた赤子に対面する。
 その無垢さに秀吉は感動する。この子さえいれば何人に憎まれても孤独ではない、そう思った。
 秀吉は、後始末をしっかりとつけたか、と聞く。そして肯定の言葉が返るとならば良いと言う。

 そして、大坂に秀吉が戻った事を暗い顔で聞いた男がいた。そう秀次である。

 
 秀次さんが闇落ちしそうですね。
 とまれ、今までセンゴクを考えると乱心はしない、と思いますが。
 徹底的に二人はすれ違うのかな?とにかく、豊臣政権もいよいよ終わりが始まりましたね。鉄甲船が沈むのと同時に秀頼が誕生って凄い皮肉と言うか、潰れますぞって感じがして少し物悲しいですね。それこそ、権兵衛の言う通り寂しいですね。

 唐入りは一時中断だけど、次の嵐はもう吹き始めています。
 果たして秀吉はどうするのか、そして権兵衛は?次回も楽しみです。

 

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