2020年12月31日木曜日

増える火種

 センゴク権兵衛、196話と197話の感想。

 佐竹と信濃国衆の喧嘩。佐竹勢は太い棒を用意して襲撃に備えていた。
 信濃の諸将が集っている陣幕にその報がもたらされる。すでに備えている佐竹に諸将はざわつくが、権兵衛は別の事に気になっていた。
 火縄の匂いがしたのだ。権兵衛は鉄砲は無用のはず、と言い、消すように促す。
 鉄砲を用意していたのは真田だった。ただし、弾も火薬も使用しない空砲であった。昌幸はあくまで威嚇の為であり、玉傷も音もしないから沙汰の折にも問題無いと言う。更に、棒の叩き合いすらなく敵を追い散らせると提言する。
 しかし、権兵衛は敵が逃げずに大事になる可能性を指摘する。が、昌幸は逆上したら、それこそ思う壺、真田が翻弄すると言うのだ。
 この言葉に事の発端の毛利秀頼は心強い、と言う。そして権兵衛に心意気を見せて欲しい、挽回の刻、と肩を強く掴みながら言った。

 佐竹の行軍を物見が監視する。
 先手は一族の佐竹義久。なんと、千五百も兵を引き連れている。
 そして大将佐竹義宜は五百騎総勢三千。更に棒ではなく得物に鉄砲まで備えているのだ。
 その報が権兵衛の下に届けられる。これは権兵衛の予想外であった。この大軍であれば名門佐竹は引くに引けない。元の宿の優先順位の争いですら毛利秀頼側の不利であった。

 佐竹義久は火縄のニオイに気付く。義久は弓手を前に出し、更に義宜へ報せる。
 義宜は信濃衆が火蓋を切ったら、やれ、と命令する。たとえ詰め腹を切らされようと大義は我らにあり、と言うのだった。

 一触即発の信濃衆と佐竹勢。
 近づく敵に権兵衛は、一人飛び出し大声で言う。暫く、と何度も。
 権兵衛は経緯を説明し、そして勝ち目がないから相止めと言い、通るよう伝えるのだった。
 毛利秀頼は当然怒り心頭、三国一の臆病者と罵る。が、権兵衛にとっては言われなれているものだった。
 一方、昌幸はこれを見て、権兵衛を侮り難し、と考えるのであった。

 佐竹と信濃衆の諍いは収まった。しかし、衝突は他にも、特にある大大名家同志でも起こっていた。

 此度の喧嘩沙汰、佐竹に東国の上杉、蒲生、そしてなんと伊達も味方に付いたのだ。
 この報になんと、奉行衆は安堵したのだ。その理由は伊達が佐竹に付いたからである。もし信濃衆に付けば諸大名を巻き込む火種になっていた可能性があったからだ。
 喧嘩は無事、収束した。が、これも秀吉の遅延故であり、未だ奉行衆の力が発展途中である事が露見したのだ。奉行衆は猪武者に目付が必要と考える。ちなみに、三成は権兵衛が焚き付けたと思っていた。

 さて、四月下旬。遂に権兵衛たちは名護屋に到着した。そこはまさに新たな都であった。聚楽を越える城、数多の諸大名の陣所、人のごった返す商店。更に、城の造り、庭、能舞台茶室、すべてが諸大名が精力を掛けて作った最先端であった。
 
 町を歩く権兵衛すると商人に話しかけられる。なんと、かつての家臣、斎藤であった。
 権兵衛はさっそく、銭を貸して欲しいと言うが、そこまでの銭はないと言う。その代わりに前田家に伝手があるので、取次すると提案する。
 そして、借銭は後ろめたき事ばかりでは無い、と言う。キチンと返済する事で両家の信頼を築ける。しかも前田利家はいずれ豊臣政権の鼎の一つになる、そう噂されているのだ。
 ただ、権兵衛は恩返ししなければいけない人が多い事を気にする。面倒、だとも言う。
 斎藤は少々評判が悪い、と言い、権兵衛も良かった事がない、と返した。
 とかく、権兵衛は斎藤に礼をする。田宮の遺髪を届けてくれた事に。しかし、斎藤は言いよどむ。しかし、権兵衛はその事を解っていた。あの遺髪が本物でない事に。
 それでも良い物である、斎藤の嘘は良い嘘だ、そう言うのであった。
 斎藤はご立派になった、仏門に入られたように、と評し、権兵衛は古径和尚の弟子になるのは断られた、と返した。

 二十五日には秀吉も到着。勝報に接し、自身の渡海の準備に入る。
 しかし、五月五日に新たな喧嘩沙汰が勃発。しかも政権中枢の徳川と前田である。
 切っ掛けは徳川陣近くの清水から前田家の家臣が水を汲んでいた為である。両家の口論から始まった諍いは徐々に人数を増す。これに本多忠勝が仲裁に乗り出すが、伊達政宗が徳川に味方すると表明する。この為、一触即発になりかける。しかし、伊達家の年寄衆が仲裁。これにて両家は引き、天下の大事には成らずに済んだのである。

 奉行衆は落胆する。秀吉が居ても喧嘩が収まらないのである。
 さらに、表向きは事なきを得たが、天下の航路は異なる方向へ向かっていた。


 前途多難、既に秀吉の力も落ち始めた、感じがしますね。朝鮮出兵は各大名間に多くの火種を残して終わる、と言う豊臣政権にとっては何一つ良い所なく終わりましたからね。
 徳川と前田の諍いが関ケ原に繋がっていくのかな。なにはともあれ、関ケ原まで見たくなりたいですね。

 佐竹との争いは権兵衛だからこそ止められた、って感じですね。戸次川の失態があるから、ある意味無様な事も出来る、って感じがしますね。
 それと同時に昌幸も、その辺りの強さを感じているみたいですね。

 また、斎藤の再登場は驚きましたね。それにしても本当に権兵衛は変わったようで変わらない、変わらないようで変わった、って感じですね。一度、大きな失敗をしたからですね。

 さて、いよいよ秀吉と豊臣政権の陰りが見え始めました。これからどうなって行くのか、楽しみです。