2019年8月25日日曜日

虎口に入らずんば

 センゴク権兵衛、146話と147話の感想。

 舟に乗っていた可児才蔵が目を覚ました。

 一方、権兵衛は牢人衆も集めて軍議をしていた。
 試し合戦を繰り返して分かった事は、赤土の壁を登ろうとすれば兵の大半を失ってしまう事であった。当然、真正面の虎口からは攻めるのも難しい。
 山中城で試し合戦を繰り返していた権兵衛は北条の城の守り方に気づいていた。
 馬出しのように複数の出入り口があり、片方が攻められると片方から奇襲をかける、と。なので、虎口以外の出入り口を見つけてそこから攻める、権兵衛はそう考えた。
 しかし、渋る者もいた。もし他の出入り口がなかったら、と。
 権兵衛は言う、城は虫や獣の巣と同じと言う。北条の城である以上、仕組みは同じだと。別の牢人も同調する。北条の城をどこからか現れる奇襲部隊にやられる話をよく聞く、と。
 さて、具体的な方法は山中城で渡辺勘兵衛が取った方法と同じである。
 まず、虎口を攻め奇襲部隊を誘き出す。そして、奇襲部隊が撤退する時に一緒に突入する、付け入りの策である。
 囮は権兵衛自ら行う。おあつらえ向きに鈴の陣羽織を羽織っている。
 そして後方での迎撃役には一番渋っている本間を当てた。

 仔細は決まった。後は出陣するのみであった。
 そんな権兵衛の元に岡田が現れる。彼は旗印を返すと言う。敵のを奪い敵に成りすまし、閂を開けると言うのだ。権兵衛は躊躇する。岡田は言う、元十万石の大名がたかが一兵卒に死んで来いと言えないのか、と。権兵衛は言う、おんしは無用では無い、と。岡田はそれを今こそ証明すると断言した。
 もはや権兵衛に言える言葉は一つだった、励め、と。

 妙算の事を知らぬ者が絡むが、サジに窘められる一幕もあった。

 権兵衛は森に話す。万が一にはおんしが大将だと。藤兵衛にも声掛けしようとするが、無用と断られる。他の者にも声掛けしたかったが時間がないので、省略する他なかった。
 多少ズッコケた仙石隊であるが、士気は十分、潮は引き、夜も白ばむ。
 権兵衛は手を合わせ、太鼓を持つように言った。ついに早川口の戦いが始まる。

 付け入り作戦。まずは大手を攻める。これには北条も驚く。しかし、大筒の用意があり準備をさせる。

 そんな中可児才蔵は舟で早川口に戻っていた。どうやら眠っていて、堀隊と共に撤退してしまったようだ。

 大手前には水堀、その先の橋は木橋であった。定石ならば橋を落とす。しかし、守将の笠原は落とさず敵を引き込む事にする。さらに外枡にいた兵も引き上げさせた。
 誘われた、と言う事は奇襲部隊が潜んでいると言う事。権兵衛はそう判断し、さらに兵を進めた。
 櫓にある大筒に最初に気づいたのは妙算であった。権兵衛は狙撃するように言うが、遠くて無理であった。妙算は撃つ気配がしたら知らせると言い、権兵衛は手盾を持つことにした。
 権兵衛は皆に大筒の存在を知らせる。そして緊張する皆を落ち着かせる為、標的は大将である自分になると言う。その上、そうそう当たらんと言い、笑った。
 岡田に肝が据わっていると言われ、おんしが命懸けをするからワシまで懸けないといけなくなったと言ったところで、権兵衛の嗅覚が大筒の発射を感じ取った。同じく、妙算も感じ取ったのか、大声で来るぞ、と言った。
 皆が地に伏すと同時に、大筒の弾が仙石隊を襲った。死者は出ず、皆無事であった。体勢を立て直し、次の砲撃までにさらに進む。権兵衛は奇襲部隊が現れなかったらこのまま突入するつもりであった。しかし、すでに盾がもたなかった。
 そんな中奥田兄弟が妙算に声を掛ける。二人で櫓に射掛けるから隙をみて狙撃をして欲しい、と。それは妙算にとっても喜ばしい提案であった。妙算は二人が他家に行かなくて良かったと感謝を述べた。
 先頭に立つのはサジ。それに続いて、仙石隊はさらに門へと突き進む。


 いよいよ、虎口攻めスタートですね。試し合戦の成果が出てますね。同じ家なら城は作りが同じ、ってのは守り方に法則があるからですね。別の城に行っても同じ守り方ができると言う。ドクトリンって言うんでしたっけ?権兵衛のたとえは分かるようで分からないですね。
 奇襲がある事を織り込んでの付け入り作戦。ですが、奇襲を織り込む済みと言うと戸次川を思い出してしまうけど…まぁ、あれも家久が神憑らなければ勝ちそうだったので大丈夫かな?
 一心不乱に門を攻める権兵衛達。ギミックが大筒だけでは無いと思うので北条方の笠原がどう奮闘するのかも楽しみですね。
 そういえば才蔵は寝過ごしたんですね。今は引き返しているけど。彼の活躍も楽しみです。あと、高虎がいればと思ったけど、小田原では別の所にいたのかな?また調べてみようかな。

2019年8月4日日曜日

無用の時代と大事なもの

 先週のセンゴク権兵衛の感想。

 小田原城の虎口攻め。秀吉は早川口を担当する堀久太郎の手腕に期待していた。
 しかし、病に倒れた久太郎は撤退。ヤマイヌの計は中止となっていた。

 殿軍となった仙石隊と牢人衆。権兵衛は妙算に虎口攻めの是非を聞く。妙算が肯定すると、権兵衛は皆に大声で言う、このまま逃げるか、虎口を攻めるか、と。

 権兵衛は更に言う。
 策も中止だし、上からの命令も無い。落としても武功にはならない。
 それでも何故戦うのか。それは権兵衛が色んな縁から学んで出した答えだった。
 出世し名を挙げても、まやかし。天下人に成っても落書き一つに怯え腹を立てる。
 八千七百度のお参りを経て権兵衛は出世や功名は無用と考えるようになった。すべては周りに流されているだけだと。
 権兵衛には己の中にもっと大事なものが出来た。それを今、皆とぶっ放したい。そう言った。

 権兵衛の言葉に出来なかった、それ。妙算は、生き様、と言った。

 権兵衛は続ける。色んな思いから、己の中から生まれる大事なもの、生き様。
 虎口を陥落させ、生き様を示そう、そう大声で叫ぶのだった。

 妙算は、下らない説法を覚えた、と言い。言えば言うほど説得力なくなると権兵衛の言葉を止めた。
 すでに、仙石隊だけならず、牢人衆も権兵衛と同じ気持ちに成っていたのだった。
 士気は十二分に高まっていた。

 権兵衛は北条にも声をかける。逃げるなら今のうち、と。
 北条は困惑した。知らぬ無の旗に羽織の鈴も理解が及ばなかった。
 権兵衛は言う。戦の世は終わりだと。合戦が無くなれば武士はいらんし、大名諸侯も無用の飾りになる。無用に成っても生きる為には己の中に大事なものを持っていなければならない。
 権兵衛は北条兵には分からんだろうと言い、無の旗を立てると宣誓した。

 
 北条側の守将笠原正厳の元に敵の詳細が告げられる。掘秀政の首には及ばぬが、元大名なら挽回の武功には十分と考えた。
 部下は城の守りが第一と言うが、正厳はあくまで首を狙う。
 正厳は重代の筆頭家老松田家出身の彼は以前主家を裏切った。そして赦された時に僧名「正厳」を号したのだ。
 彼は必ず仙石秀久の首を取る、そう誓うのだった。


 権兵衛らしい演説でしたね。全てを失ってから得たもの、それが今の権兵衛を形作っているんですね。心強いですね。
 ただ、権兵衛の言葉を聞いてると、じゃあ秀吉はどうなんだろう?って感じになります。その後を考えると権兵衛のような考えに至れなかったのかな、って思ってしまいます。無論、小田原以降も話が続けば、また変わるのかな?
 さて、最後の相手は笠原。松田憲秀の息子で、彼も失敗して挽回を狙ってます。果たして虎口攻めがどうなるか。楽しみですね。