2020年2月16日日曜日

それぞれの対面

 センゴク権兵衛、162話と163話の感想。

 黄母衣衆の伊東が権兵衛を呼びに来た。秀吉が本営に来るよう遣わしたのだ。
 だが、権兵衛の様子は普段と変わらない。むしろ、徒歩で行くこと知り馬を貸し出そうとした者を、殿下の期限が分からぬ内は関わらぬ方がいい、と気遣う。
 伊東は権兵衛に恐くないのか、と尋ねる。権兵衛は心配は心配じゃが、と答えるのみだった。

 秀吉は奉行衆より話を聞いた。奉行衆の判断は、勝手な行動から九州陣の反省は見えない。天下静謐の世の妨げにもなるので、苛烈な処断もやむを得ない、であった。
 だが、秀吉は言う。彼奴も泣いて平伏するだろう。それを無下に斬り捨てれば天下の聞こえも悪い、と。
 なので、権兵衛の平伏を見てから沙汰をする、と。

 そんな中で権兵衛が入って来る。

 秀吉の本心は赦免であった。だが、秀吉は天下人である。自分の威信を微かでも傷付ければ厳罰に処さざるを得ないのだ。
 だから早く泣いて謝って欲しかった。しかし、権兵衛は昔の用に命令を待ってる顔でいる。その上、何の御用で、と聞いてくるのであった。
 秀吉にも予想外の展開であった。更に御用とは、と聞いてくるので、その前に言う事があるだろう、と促す。
 しかし、堪忍料の一万石の礼を述べる。秀吉が赦したわけではない。そう言うと、権兵衛は恩を忘れるなと言ったのは秀吉だと言い、更にどうやって恩返しすればいいと聞いて来た。
 完全に秀吉の思惑は崩れてしまった。早川口での戦いの話題を出しても権兵衛は、手前勝手の合戦で恩返しには至らないと言う。
 困った秀吉は、金の団扇を下賜する為に呼んだ、そう言う事にした。
 礼を言う権兵衛に、秀吉は赦したわけではない、と再三言うのである。

 帰って来た権兵衛に伊東は肝が据わっていると言うのであった。

 権兵衛はずっと秀吉が心配だった。古渓和尚も秀吉の世の生末が悪くなる可能性を指摘したいた。だが権兵衛は今回の謁見で分かった。秀吉の根は悪い人ではない。だから天下はいい感じになる、と。

 
 北条軍が軍議を行っている。そこには支城の落城の報が次々と入る。
 更に玉縄城の北条氏勝が豊臣の案内役を務めている。そんな噂まで入って来た。
 家臣達は降伏した城主の自刃を徹底するよう進言するも、氏直はそれを拒む。
 また、民衆の動揺も広がっており、民衆の厳戒なる統制も求められるも拒む。
 曰く、民が心の余裕を失えば疑心暗鬼が増すだけである。そして、米の貯め込みが起これば、米余りと米不足の格差から内部闘争に陥ってしまうと。
 しかし、山角は今は有事、内政は二の次、三の次、と氏直に迫るのだ。

 そんな中、笠原が現れる。氏直は人払いをして、二人っきりになる。
 既に松田より氏直は仔細を聞いていた。氏直は笠原を許すつもりであった。虎口を一時取られただけなのだから。
 しかし、笠原の考えは違った。一時的にも陥落した事を一大事とみていた。この報が流布されれば、北条兵の名を貶むると同時に国中に動揺が伝播すると。
 笠原は言う。民兵も諸士もよく戦った。敗因は自分の失策である、と。
 氏直は答える。失策は死罪に及ぶ咎に非ず、と。
 笠原は報いたかった。北条の為に誇り高く死した者を敗者にしたくなかった。
 だから、提案する。此度は笠原が敵と内通し、敵を城内に引き入れた事にしたい、と。自分の悪名が広がる程、北条兵の名の失墜を食い止められる。そう言うのだった。
 これは天啓の如く降って来た策。そして、その時氏直の心とも繋がった、そう感じた。氏直も自分と同じ心持で戦っている、笠原は言うのであった。
 氏直は笠原の策を受け入れ、反逆者として死罪を言い渡すのであった。
 嘗て、氏直は笠原を臆病となじり、それが笠原の武田への寝返りに繋がった。
 氏直はそれを反省し、彼を友と呼び、詫びたのだ。

 そうして、松田親子は内通の嫌疑により、憲秀は監禁、笠原は死罪になった。

 しかし、別の伝承があった。小田原合戦後、僧となり伊豆国蔵六寺を開山。寛永三年に六十歳の生涯を全うしたと寺伝が残っている。

 
 と、言うわけで早川口攻め編終了です。
 権兵衛と秀吉の謁見はよかったですね。完全に秀吉が飲まれていたし。
 素の秀吉が出せるのも、権兵衛ぐらいなのかな?権兵衛が側近になれば丁度バランス取れて、豊臣政権も安泰しそうだけど……

 そして氏直と笠原。こちらもよかった。それに北条と豊臣で対にしたのかな。
 氏直はすでに戦後見つめているのかな?ただ、そうすると氏政は何を考えているんだろう。そちらも知りたいですね。
 因みに、笠原のその後はどちらとも取れる感じにしましたか。センゴクとしては出家したと考える方がいいのかな?

 ともかく、これで早川口も終わり。後は北条降伏に物語は進むのかな。
 小田原戦がどう決着するのか楽しみです。