2020年3月1日日曜日

暴走する正しさ

 先週と今週のセンゴク権兵衛の感想。

 氏直は籠城戦の憂さ晴らしの為の遊興を推奨した。
 しかし、一部の民衆は一致団結を標榜し黒ずくめの服で取り締まりを始めてしまった。彼らは検断人の様に遊興を禁止し、間者と思わしき者を殺害した。

 城の外に逃れる者で始める。高札の老僧は城外でそれを見ていた。

 さて、権兵衛は陣を引き払う事にした。家臣達が勝手に宴会した所為もあって、金がなくなったのだ。
 だが、家臣からは不満の声が上がる。主に、これから見世物や遊女が集まるから離れたくないのだが。
 中には殿下から拝領した金団扇を売ろうとの声まで出た。権兵衛は一瞬考えるも、すぐに否定する。家臣達もまた。
 とにかく、徳川の使番も外され、怪我の手当てもあるので、明朝小田原から退くことにする。また、権兵衛は殿下に真心は伝わった、と言う。権兵衛は秀吉を見て、以前の情深さは残していると感じた。ただ、天下人故に縁故の贔屓をすれば世間から疎んじられてしまう。それでは天下は悪しき縁の流れに向かう。と、権兵衛は古渓和尚の真似をしていった。

 権兵衛と二人っきりになった鷲見は言う。
 何だかんだ納得している、と。人様に何言われようと、胸張って生きてくだけの心の旗を立てただろう。そう言った。
 鷲見は権兵衛が元気になったのを喜び、残る人生は乱世の終わりを見届けようと言う。
 そんな二人に高札の老僧が話しかける。乱世の終わりに疑問を呈す様に。
 だが、老僧はそんな話の続きはせず、干し飯一椀にて不老長寿の秘伝を教えると言う。なんでも、諸国遍参し古堂に不老不死の秘密を記しているとの事である。
 権兵衛と鷲見には心当たりがありすぎる話であった。
 二人は腹八分目と言い。世話になった気がするから好きなだけ干し飯をやると言う。
 だが、老僧は八分目でいいと言う。そして、不惑過ぎたれば腹八分目に生きていく事と言うのだった。

 五月初旬。秀吉は京から淀殿を始めとする諸大名の女房衆を小田原に呼び寄せた。北条と同じく、包囲戦の憂さ晴らしである。民衆の前に現れた京極竜子に皆は歓声を浴びせた。ちなみに、それは淀殿以上で淀殿は不満であった。

 小田原城内では黒ずくめの衆が検断を行っていた。そんな豊臣の間者が捕らわれ、殺される。彼らの頭は言う、顔はキレイに、と。お殿様に小汚い首を献上出来ないから。
 頭は女性であった。それは以前、上杉に攻められた時に氏政に禁制を求めた村人の一人。氏政に花を渡した幼子の成長した姿であった。
 彼女は願掛けする。立派な正しい北条様が戦に勝つように、そしてお殿様にお目通りできるように。

 氏政は市中に出る。身分を隠して見回るのだった。田畑を見て耕作してる民に困り事を聞くのだった。そんな中、民は氏政に水を進める。御付きの二人は緊張し、自分が飲むと言う。しかし、氏政は何の疑いも無く水を頂き、飲み干した。
 再び歩き出した後、御付きの者は飲むフリをするように言う。毒を警戒しているのだ。
 しかし、氏政は言う。間者と良民の違いが目を見てわからぬか、と。

 城下を回る氏政の目に黒ずくめの一団が目に入る。御付きの者曰く、字を知らぬ民の代わりに目安に届け出をする村衆との事。また不正の検断も自らしている、と。
 見ると、ちょうど不正な者を懲らしめているところであった。御付きの者は素性を調べられる事を恐れて離れるよう氏政に言う。しかし、氏政には見逃せぬ事であった為に逆に彼らに近づいてしまう。
 御付きの者が止める中、氏政は彼らに程々にするように言う。彼らは蔵に米を蓄えた傾国の凶徒と言う。しかし氏政はやりすぎと言い、裁きは法の手続きに則らねばならんと訴えた。
 黒ずくめの衆は彼らを訝し、素性を調べようとする。そんな中、頭の姉御が皆を制止させる。再び巡りあった氏政に頭の姉御は泣き崩れ、あの時と同じように花を渡した。
 頭の姉御は言う。御国の為に、正しい御国のために悪い輩をたくさん処罰しました、機物にしました、と。
 氏政に言う、御国を守って下さい、と。そして間者の首を見せるのだった。
 氏政はあいわかった、忝し。と言うほかなかった。

 雨が降り始めた。雨宿りしている氏政は思う。正しき国が最後に辿り着く先は如何な国なのか、と。そう先代たちに尋ねたかった。

 氏政の母や継室の元にも一人息子を失ったもの話が伝えられている。曰く、北条のお役に立ったのであればこれ以上の喜びはない、と。継室はすでに悲しみに耐えられなくなっていた。二人は六月十二日に亡くなっている。自害の可能性もある、と。

 五月下旬。堀久太郎は海蔵寺にいた。後世には秀吉は関東を秀政に与えようとした、そんな逸話が出来た。それ程の才人であった。
 久太郎は思い出していた、権兵衛と出会った時の事を。
 権兵衛と同世代で同じ美濃の出身。片や名人、片や改易牢人。道は異なれど互いに信長秀吉の縁に結ばれし武者の遠行となる。
 机に突っ伏した久太郎。机からは土鈴が転がり落ちる。
 享年三十八である。


 と言うわけで、堀久の最期です。感慨深いものがありますね。権兵衛とは対照的な人物でしたし、因縁も多かったですからね。悲しいです。
 土鈴があったって事は権兵衛は帰る前に会ったのかな?それとも人を介して渡したのかな。最期の会話が有ってもよかったのに。

 小田原城内は正義が暴走した、って感じですね。そして、まさか、回想で登場した村娘が再登場するなんて思わなかった。氏政と再会出来てよかったですが、氏政自身は複雑でしたでしょうね。正しさがあらぬ方に行ってしまった、と。
 この後どうなるのでしょう。

 後、権兵衛が小田原から退いているから、本格的な挽回はまだまだ後なのかな。どういう経緯で小諸を与えられるかも気になりますね。
 次回も楽しみです。

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